8月の終わり、よしむら大いに未来を語る


みやはら:でもさあ、普遍的な…普遍って言ったっけ、なんて言ったっけ

よしむら:普遍て言ったよ

み:普遍的な言語にしてわざわざ言うことってなにがあんの?

よ:え、じゃあ独特の言語にしてわざわざ言うことってなにがあんの

み:ない

よ:じゃあ、我々が、この、外界に向かって生きている必要性はどこにあるの?…そもそも我々は生きているのか。

み:わかんなーい。

よ:何が必要なの、何がどうでもいいのって、すごい難しい

み:でしょー?だから…だから、普遍性を持った言葉でとりあえずなんか書かなきゃいけないのかなーと思ったんだ、そういえば。

よ:ああー…ちょっとわかんないな。

み:私もわかんなかった今。何も言ってなかった

よ:でも、なんかちょっと希望がある感じがした。ちょっとだけ

み:でしょ−?

よ:なんとなく、希望がある感じ。…やっぱり希望は、他人の中にあるのか。ってこと?

み:他人と、あたしとの真ん中にあるんだよ。…ちょと間を意識しようかなってさっき。

よ:うん、すごいまっとうな…当たり前のことではないけどすごくまっとうに…そうだねっていう

み:でしょ?ちょと、考え方が向かってった




よ:結局中学生の頃にさ、人が…人間関係のなかで学ぶことなんだよねたぶん。…たとえば人を好きになるじゃない、女の子が男の子を好きになるじゃない。つきあったりするじゃない。

み:うん

よ:自分自身は、そもそも元々女の子の友達のなかで、その、怖い友達のなかで受け入れられるために共通のルールのなかに収まろうとするじゃない。で、さらに、男の好きになって私あの人好きなんだーって言うことでそのグループから排除されないために、そのグループのおめがねにかなう人を好きにならなきゃいけない。まず。

み:うん

よ:そこで、自分自身もそうだし、好きになる対象自分の嗜好っていうものもマトモでなくてはならないっていうのをさ、一度そこで勉強するわけじゃん。でそれが大学卒業するあたりでさ、ちょっとずつばらけてきてさ、あ、自由でいいんだっていうさ、あのほら、ヤマシタトモコの漫画にもあったけどさ、レズのおばあさんの話。

み:ああー

よ:…そこんとこの勉強が俺はできてなかったな。

み:ジョシじゃないからじゃないの?ダンシもあるの。

よ:…基本は同じでしょ?基本は。

み:うん

よ:…女の子は特にそこんとこ敏感になるはずなんだよね

み:うん。そうねーシビアなルールがあるわよね

よ:だからそういう意味で、ろきのん系ジョシとかっていうのは、ちょと、みんなと違う自分、みたいのを受け入れてくれるものとして、こう、音楽好きになったりするわけじゃん。…なにその顔。

み:私はそっち側でもない、んだなー

よ:うん。でも今俺がまさにぶちあたっている問題ってのはそこなんだよおかしなことに

み:そこの、客を?客層を

よ:そうそうそうそう…あいや、そういう意味じゃなく自分自身がさ、普遍性をさ、勝ち得なければいけない。自分が今いるグループがあって、で、日本人の10代20代30代ぐらいの、市場があって、

み:うん

よ:どこかに合致しないといけないし、それでいて、こう、特異性をもってなきゃいけないし

み:うん

よ:俺自身が気持ちよくないといけないし、なんて言ったってうちの社長がさ、俺をいま一番束縛すべき団体の社長がさ、ひらくが気持ちいいことやんなきゃ意味ねえよってさ、本気で言うんだよ。社長けっこうまあ、そういう人なんだけどさ、俺ホント好きなんだけど。

み:うん。少年のよう。

よ:うん。難しいんだよ。…挙げ句の果てには考えるな感じろ、って言われるんだよ。

み:誰が言ってるんだっけそれ(笑)

よ:みんな(笑)…難しいよね…

み:うん。そこが難しいよ

よ:やっぱり表現者にならないのが賢いよね。職業的…だから俺ね、今日考えてたの、仕事しながら音楽やろうかなって

み:ふーん

よ:でも俺そもそも仕事しないでいるためにって言ってたよなって

み:うん、言ってたよ

よ:まあそれはひとまずおいといて、昔のことだから、まあ昨日のことといえ昔のことだからね、ひとまずおいといて…で現実的に仕事するとしてじゃあ俺何ができんのっていったら、今何もできることないんだよね。就職できない。

み:そうなの?

よ:だってできないじゃん俺

み:そっか…できないね

よ:高卒だぜ?

み:そうだよねー。高卒なんだ!

よ:大学中退だけど、

み:じゃ大学に入ればいいんじゃない

よ:何年かかんのあと

み:6年ぐらい?

よ:30。

み:…誰もいらないわ。

よ:でも、たとえばもし俺が30になったときに、6年前のことを、なんで俺あんとき大学入ろうなんて思ったんだろう、とは思わないと思うんだよね、30になった
ときには、きっと、俺が今から勉強して大学入ってたとして、あよかったなって思う…

み:ふーん。なんで

よ:だって、30になっちゃったらさ、今までこう、24だけど年を経てきてわかったことは、なっちゃったら、もう年は関係ないっていうか

み:うん

よ:いずれ30になるし、そう考えると、今からしたら30ってさ、上だけど、30になったら30がゼロ。

み:…うん

よ:でもめんどいじゃん。だって今からさ、早稲田入り直してもしょうがないじゃん

み:京大行けば、京大

よ:て思うでしょ?…したらあと二年かかるでしょ。二年かかって

み:やだー…じゃあ一緒に勉強しようよ、京大いく勉強

よ:お前はなんのためにやんの。

み:えー、京大いくために(笑)

よ:いくの?

み:いくいくーいきたいいきたい

よ:ほんとに行きたいの?

み:東大の方がいい

よ:えでもお前、院いけるよ

み:…院よりも学部行きたいんだよね

よ:なんで?

み:そういう風な勉強がしたい。どっちかっていうと。だって院行ったらさ、でっかい論文書かなきゃいけないじゃん。

よ:…そのなんか大学行かなかった人が、大学行っとけばよかったーって、あんとき勉強しとけばよかったーっていうみたいなのやめてよ。卒業したひとが。

み:そう?(笑)

よ:なんかあれでしょ、ゼロから全部体系的に補完してくれる感じがするんでしょ、なんとなく。

み:そうそう…

よ:だって、あんた、卒業したじゃんいっかい。幻想捨ててよ

み:はい(笑)。でもだってさーん…

よ:…じゃ医学部行く勉強する?

み:あたしカタカナの名前とか覚えたい!

よ:てとろ…

み:テトロドトキシン。でもあたし生物とか大好きだよ。ランゲルハンス島とかさ。ホルモンとか。頑張って!て思うじゃん。内蔵とか

よ:思うかもしれないけど、お前の名前覚えてやるよとは思わない。

み:内蔵とか!だって自分の、ここにあるものの名前だったらすごい覚えられそうじゃん

よ:でも別にここにあるものそのものを差してるわけじゃないじゃん。それを、昔の人が勝手に名前つけたものを覚えてるわけでしょ。それは、むしろ自分の体を見てるんじゃなくて昔の人の言ったことを聞いてるだけじゃん

み:…ええぇー

よ:要するに勉強したくねんだよ俺は

み:(笑)…えぇー…医学部か。

よ:俺さ、高校受験のときも考えてたかな、脳みそをぴってスキャンして、IQぴって算出してくれて

み:無駄なテストを受けずに量れるものがあるだろって(笑)…それがなんかAO入試とかなんだよね

よ:ちがくない?だってAOって、内申点ていうか推薦でしょ?要するに

み:でも内申点なくてもさ、面接でなんか面白いこと言って、なんかいけたりするようなことはないの、よくわかんないけど

よ:大学の中退者にAO入試ってあんの

み:わかんない(笑)

よ:AO入試で東大とか医学部とか絶対無理でしょ

み:うん、ない

よ:それこそ早稲田の第2文学部でしょ。…文化構想か。…俺文化構想しねえし

み:…構想するんだよね。

よ:どゆこと?

み:作るんじゃなくて、

よ:ちょと待って、構想って言葉の意味をちょっと捉え直そう

み:ちょっと、外から批判してみるんじゃないの?

よ:まじ?アウトロー養成学部なの

み:違うの(笑)あたしは勝手に想像してた(笑)

よ:こうそうってお前なに、もしかして抗って争うだと思ってる(笑)

み:構えて想うでしょ。だから…構えて、想うんでしょ

よ:うん、そうして捉える……無意味じゃん。

み:文系の勉強なんてだいたい無意味だもん。人文科学科だから、無意味代表

よ:だからさー…もうなんか、情操教育部とかにしとけばよくね。感情教育部とかさ

み:(笑)

よ:大江の小説にあるんだよね、その、エデュカシオサンチマンタールって

み:(笑)いいねー。いいねそれ。それいいなあ…